Web近代食堂 プロの飲食店のためのメニュー&マネジメント Cuisine&Management for professional

プロのレシピ 2018.09.19

WEB近代食堂メイン画像

人気シェフのとっておき「ニッポン食材」活用レシピ★
苅部大根を”丸ごと”使った揚げ出し

日本には、こだわりの生産者が情熱を込めてつくる素晴らしい食材がたくさんあります。その誇るべき食材をクローズアップ! 人気店のシェフがとっておきの「ニッポン食材」と、その活用レシピを教えます。今回紹介するレシピは、鮮やかな色味も特徴的な「苅部大根」を使った一品。大根の皮も葉も丸ごと使い切ります。

「FRESCO」の苅部大根

9年かけて作り出したオリジナルの地元野菜

横浜市保土ヶ谷区で露地野菜の栽培・販売を行なっている「FRESCO」代表の苅部博之氏が、皮の赤い辛子大根をベースに掛け合わせを続け、9年かけて作り上げたオリジナルの大根。地域の土壌や気候に根差した地元の野菜として注目されている。「水気があり、辛味の少ないもの、辛味の中にも甘みが出るようにしたいと考えて、選別を続け作り上げました」(苅部氏)。肉質は緻密で、ほのかな辛味のなかに甘みが感じられる。煮込むと崩れにくく、生食でもおいしい。また皮の色みにもこだわっており、白からピンク、紫へと変化するグラデーションの美しさが特徴。色みのある部分をすりおろしてレモン汁をかけると、きれいなピンク色に変わるのでおすすめだという。葉の部分もおいしく食べられるので、一本丸ごと活用したい。

■「FRESCO」(http://fresco.opal.ne.jp/)

苅部大根の揚げ出し

苅部大根の皮や葉も活かし、彩りよく仕上げた。根の部分は下煮してカツオだしを含めておき、素揚げして油の旨みを加えながらしっとりとした食感を工夫。皮はピンク色に色づいた部分を甘酢漬けにしておき、色味と酸味のアクセントに。葉はさっと素揚げする。
●参考売価650円/原価50円

■材料(4人前)
大根(苅部大根) 10㎝分
米ぬか 適量
大根の葉(苅部大根) 適量
片栗粉 適量
カツオだし 400ml
味醂 大さじ2
薄口醤油 大さじ2
塩水(塩分濃度は海水程度) 適量
甘酢(水、酢、砂糖を同割り) 適量
旨だし(だし10、薄口醤油1、味醂1の割合で合わせたもの) 480ml
おろし生姜 適量

    •     
    •  

■作り方
1 大根は、2.5㎝幅に切り、皮をむく。米ぬかでやわらかくなるまで1時間ほど煮込む。
2 1の大根の皮は、せん切りにし、塩水(塩分は海水程度)に30分ほど漬けた後、塩抜きする。甘酢に2時間ほど漬けておく。
3 1の大根をカツオだし、味醂、薄口醤油でコトコトと15分ほど煮る。火を止めてそのまま煮汁に漬けておく。
4 注文ごとに、3を煮汁から引き出し、水気を切る。片栗粉を表面にまぶし、170℃の油で3分ほど揚げる。
5 大根の葉は、170℃の油でさっと素揚げする。
6 旨だしを温め、器に張る。4を器に入れ、上を5で覆う。おろし生姜、2の大根の皮を飾る。

「苅部大根」を活かすPOINT
◦大根の皮、葉も活用し、丸ごと使い切る
◦だしを含める&素揚げで旨みをプラス

      •     

【シェフ紹介】
SHIMOMURA(横浜・元町)オーナーシェフ 下村邦和氏

地元産の“横浜野菜”を積極的に使う『SHIMOMURA』オーナーシェフの下村邦和氏。今回紹介する「苅部大根」は、苅部氏の畑に下村氏が直に出向いて仕入れているという。「通常の大根と比べきめが細かく繊維が密で、食感が良い。その分煮込む際には時間がかかりますが、崩れにくくきれいに仕上がりやすい」と下村氏。今回は、赤みがかったきれいな皮や、葉の部分も料理に活用して彩り鮮やかな一品に仕上げた。

数々の和食料理店で経験を積んだのち、『関内本店 月』等を展開する㈱双辰に入社。2005年より総料理長として活躍する。2009年に独立し、横浜・元町に『SHIMOMURA』、2013年にはラーメン店『麺館 SHIMOMURA』を出店。固定メニューは定めず、旬の食材を使った完全予約制のお任せコースのみを提供する。客単価は昼3500円、夜5000~6000円。
■住所/神奈川県横浜市中区石川町3-107
https://www.shimomura-kunikazu.com/

※月刊「近代食堂」2015年1月号に掲載した内容を再編集しています