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プロのレシピ 2018.11.28

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人気シェフのとっておき「ニッポン食材」活用レシピ★
旨みを閉じ込め、しっとり。八千代黒牛のグリエ

日本には、こだわりの生産者が情熱を込めてつくる素晴らしい食材がたくさんあります。その誇るべき食材をクローズアップ! 人気店のシェフがとっておきの「ニッポン食材」と、その活用レシピを教えます。今回紹介するのは、千葉県産の「八千代黒牛」フィレ肉を使ったグリエ。赤身の美味しさにも定評のある牛肉をしっとり焼き上げ、ソースやピュレ、オイルづかいで魅力を高めたひと皿です。

八千代黒牛

脂と赤身のバランスがよい交雑牛

ホルスタイン種の雌と、黒毛和種の雄の間に生まれる交雑種(F1)。現在、千葉県北総地域の農場で育てられている。生産性に優れるホルスタイン種の特性と、脂がのりやすい黒毛和種の特性を受け継いだ品種で、味わいの面でも評価が高い。価格面でも両者の中間程度。「和牛の血筋を引いているので細かな霜降りが入り、赤身もやわらかい。また通常肥育期間は24ヵ月が多いところ、八千代黒牛はそれより2~4ヵ月長く肥育しています。赤身にも脂がのり、味わいがしっかりしていて使いやすいと言われます」と千葉北部酪農農業協同組合・牛肉事業部の事業部長 小野功氏。

■千葉北部酪農農業協同組合・牛肉事業部(☎0479-60-2161)

八千代黒牛フィレ肉のグリエ 赤ワインソース

春に向けて“新芽を、牛が食んでいる”イメージで作り出した美しいひと皿。牛フィレ肉は、表面に油を絡めてシンプルにグリエし、しっとりと香りよく焼き上げる。スタンダードな赤ワインソースに、パースニップのピュレ、人参の色と香りを移したオイルを。
●参考売価参考売価5000円/原価1400~1500円

■材料(1人前)
牛フィレ肉(八千代黒牛) 90g
塩 適量
黒胡椒 適量
ピュアオリーブオイル 適量
野菜類(紅しぐれ大根、聖護院カブ、黒大根、紅芯大根、あやめ雪(カブ)) 適量
葉もの野菜(アスパラ菜(オータムポエム)、デトロイト、ディル、赤軸水菜、菜花) 適量
白人参のピュレ(※1) 20~30g
赤ワインソース(※2) 20g
人参とオリーブオイルのソース(※3) 適量

※1 白人参のピュレ
材料
パースニップ(セリ科の根菜)、無塩バター、牛乳、生クリーム 各適量
作り方
パースニップは、皮をむいて適度にカットし、鍋に入れる。牛乳、生クリームを同割りで ひたひたに加え、やわらかくなるまでじっくりと煮る。ミキサーにかけ、シノワで漉す。
※2 赤ワインソース
材料(一回の仕込み量)
エシャロット 200g
無塩バター 適量
  赤ワイン 700ml
ポルト酒 700ml
  フォンドボー 500ml
作り方
エシャロットのみじん切りを無塩バターで炒め、赤ワインを加えて煮詰める。ポルト酒を加えて煮詰め、フォンドボーを加えてさらに煮詰める。仕上げに無塩バターを加えてモンテする。
※3 人参とオリーブオイルのソース
材料
人参、ピュアオリーブオイル 各適量
作り方
人参は、スライスし乾燥させておく。ピュアオリーブオイルを加えながらミキサーにかけ、一日冷蔵庫で保存する。翌日紙で漉して使用。

    ■作り方
    1 牛フィレ肉は、塩、黒胡椒をふり、ピュアオリーブオイルを絡める。グリルで両面を焼く。面を返す時にもその都度ピュアオリーブオイルを絡めながら、表裏を2回ほど返しながら焼き上げる。
    2 温かい場所に1を置き、休ませる。
    3 野菜類は、それぞれ薄く細長くスライスし、丸く巻く。
    4 皿に白人参のピュレをひき、3の野菜、葉もの野菜を飾る。2の肉を適度にカットし、盛り付ける。肉の断面や野菜類に塩を軽くふりかける。赤ワインソース、人参とオリーブオイルのソースをかける。

    「八千代黒牛」を活かすPOINT
    ◦油でコーティングし旨みと水分を閉じ込める
    ◦3種のソースとピュレで味と香りに変化をプラス

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    【シェフ紹介】
    La Coupe d'Or(東京・白金高輪)シェフ 坪香絢也氏

    香りに敏感な日本人を意識しつつ、素材の味、香りをいかした“ナチュラルな”フレンチを提供する『La Coupe d'Or』。生産者の顔の見える食材を求め、東京近郊でこだわりの食材を探し、行き着いた食材のひとつが「八千代黒牛」だ。5500円のプリフィックスコース中に組み込む、カジュアルな価格で安定した品質の牛肉として導入。「脂と赤身のバランスがよく、しっかり“牛肉の味”を感じさせる旨みと、ほどよい脂があります」(坪香シェフ)。

    大阪あべの辻調理師専門学校フランス校に進み、リヨンのミシュラン一つ星レストラン『Gourmet de Seze』で研修。その後、南仏『Le Moulin de Mougins』やパリのレストラン等で経験を積み帰国。2013年『La Coupe d'Or』シェフに就任。
    初心者でも気軽に楽しめるようにカジュアルさを工夫し、フレンチ愛好者のすそ野を広げている。客単価は昼3500円、夜9000円。
    ■住所/東京都港区白金1-27-6 白金高輪ステーションビル1F

    ※月刊「近代食堂」2015年2月号に掲載した内容を再編集しています