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プロのレシピ 2018.08.15

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とっておき「ニッポン食材」活用レシピ★
ひと足早い秋を感じる、 もっちり食感の百合根饅頭

日本には、こだわりの生産者が情熱を込めてつくる素晴らしい食材がたくさんあります。その誇るべき食材をクローズアップ! 人気店のシェフがとっておきの「ニッポン食材」と、その活用レシピを教えます。今回のとっておき食材は、北海道・真狩村「筒井農園」の百合根。和食の料理人が教える、もっちり食感を活かした「百合根饅頭」のレシピを紹介します。

真狩村の筒井さんの百合根

百合根の名産地で5年かけて丁寧に栽培・出荷

百合根は国内生産のほとんどを北海道が占め、真狩村はそのうち約4割を生産する名産地。その真狩村にある「筒井農園」では、25年ほど前より百合根の生産を開始。苦味の少ない品種「白銀」を、春植えで5年かけて栽培する。「百合根は土づくりが第一。しっかり土作りをした上で百合根を植え、ウイルス感染しないようにこまめに手を掛けて育てます。また傷つきやすいため、一球ずつ手で収穫して箱詰めし、出荷しています」(代表・筒井恒滋氏)。通常11~12月が出荷のピークで、同農園では知人を中心に2~3月位まで出荷。段ボールにおがくずをしき、百合根同士が接しないように丁寧に詰めて輸送する。

筒井農園(☎080-5594-8456)

百合根饅頭 車海老と蚕豆の餡掛け

女性を中心に人気の高い百合根饅頭に、旬の食材を加えた餡を組み合わせて季節感を演出。百合根の生地は、粘りのつよい大和芋、片栗粉を加え、やや固めに練り上げてもっちりとした食感に。餡に加える食材を変えたり、饅頭の芯にウニや鴨を鋳込んだりとアレンジも可能。
●参考売価1400円/原価450円

■材料(1人前)
百合根 1株分
大和芋 大さじ1
塩 適量
片栗粉 適量
そら豆 2さや分
車エビ 2尾
一番だし 適量
薄口醤油、酒 各少々
塩、味醂 各少々
葛粉 適量
木の芽 適量

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■作り方
1 百合根は、一枚ずつはがし、掃除する。色が変わっているところは、庖丁でそぎ取る。
2 1に軽く塩をふり、さらしで包んでザルにのせ、5分ほど蒸す。
3 2をさらしから取り出し、温かいうちに裏漉しにする。冷めてからすりおろした大和芋を加え、練るようにして混ぜ合わせる。もっちりとした食感を出すため、生地は固めに仕上げること。塩少々で調味する。
4 3の生地を一人前ずつラップで茶巾に包み、5分ほど蒸す。
5 4をラップから取り出し、片栗粉をまぶし、180℃の油で3~4分揚げる。
6 そら豆は、下茹でしてしておく。車エビは、塩茹でしてひと口大に切る。一番だしに薄口醤油、酒、塩、味醂を合わせて調味し、そら豆と車エビを軽く炊く。葛を溶いて餡に仕立てる。
7 5を器に盛り、6の餡をかける。木の芽を天に飾る。

「真狩村の筒井さんの百合根」を活かすPOINT
◦白さを活かし、色味の映える食材と組み合わせる
◦生地は塩のみで調味し、百合根の風味を活かする

【シェフ紹介】
和食 さくらい(東京・学芸大学) 店主 櫻井正明氏

何を食べているか分からないような料理は苦手。素材の持ち味を壊さないように心掛けています」という『和食 さくらい』の櫻井氏。素材へのこだわりは強く、仕入れは基本築地に直接出向いて行ない、特定の食材は生産者から直接取引で仕入れている。
今回紹介してもらった「筒井農園」の百合根は、2年ほど前に知人の紹介で頂いたことをきっかけに使い始めたという。「傷が少なく真っ白できれい。ホクホクした食感と自然な甘みを生かして調理したいですね」(櫻井氏)。

大学生時代にアルバイトで入った割烹店で見込まれ、卒業後社員として入店。その後、数々の和食店で経験を積む。『南麻布 伊ざわ』の立ち上げから携わり、料理長として活躍後に独立。2011年1月、36歳で『和食 さくらい』を出店した。カジュアルな飲食店が連なる“横丁”にありながら、本格的な割烹としての料理と空間を提供。大人の客層を集めている。
■住所/東京都目黒区鷹番2-21-17学大横丁205

※月刊「近代食堂」2015年6月号に掲載した内容を再編集しています