旭屋出版 受動喫煙防止に関する法案の「追加措置案」。飲食店への調査で反対の声が多数。見直しや緩和化が望まれる

 受動喫煙防止対策の強化案を盛り込んだ健康増進法改正案。先の通常国会では自民党と厚生労働省(以下・厚労省)の間で調整がつかず、法案提出は見送られたが、秋の臨時国会にて再度、議論がなされる見込みだ。
 自民党と厚労省間で調整がつかなかったのが、飲食店における規制内容。厚労省は、「原則建物内禁煙」という従来の考え方は変更せず、経過措置として居酒屋等での喫煙・分煙を容認する代わりに、複数の追加措置を事業者に求める考えを示し、自民党は恒久措置として「延床150u(客席100u)未満の飲食店では、喫煙・分煙等を選択可能」という考えを示すに至る。結果として、経過措置と恒久措置での折り合いがつかず、法案は纏まらなかったが、報道などによると、喫煙・分煙を選択した事業者への「追加措置案」として検討された案は、以下の内容だ。



【報道より想定される「追加措置案」】

  • 延床150u(客席100u)以下の飲食店は『喫煙可』『分煙』『禁煙』の表示義務を課した上で、喫煙可能とする
  • 喫煙可・分煙とした場合、未成年者のお客様を立ち入り禁止とする
  • 喫煙可・分煙とした場合、未成年者の従業員の就業を禁止とする
  • 喫煙可・分煙とした場合、店頭でたばこによる健康影響に関する警告表示を義務とする
  • 喫煙可・分煙とした場合、求人広告等を掲載する際に健康影響に関する警告表示を義務とする
  • 喫煙可・分煙とした場合、インターネット広告等を掲載する際に健康影響に関する警告表示を義務とする
  • 喫煙可・分煙とした場合、本人の同意なくその飲食店への同伴を求めることを禁止する


 これらの追加措置案は、外食業界にネガティブインパクトを与える内容だ。飲食店の集客や人材確保において、大きなマイナス要因になりかねない。飲食店によっては、全面禁煙を選択せざるを得なくなることも予想される。
 そこで、追加措置案について、実際に飲食店がどのように考えるのかを調査した。その結果、追加措置案には反対の声が多く、内容の見直しや緩和化が望まれていることが分かった。また、厚労省案であると容認されない分煙措置への投資額や、利用者が急増している火を使わない「新型たばこ」の禁煙エリアでの利用についても調査した。以下に、その調査結果を報告する。



「追加措置案」への意識

追加措置案に関しては、概ね3割程度の認知に留まり、半数が反対意見。
主に対象となる小規模店舗の反対意見が僅かであるが高く、全席喫煙店舗では54%が反対。

Q1. 現在、健康増進法改正に関し、飲食店をすべて原則禁煙(エリアによる分煙やフロア毎の分煙は認められず、喫煙専用室による分煙のみ可)の方向性で進んでいましたが、延床150u(客席100u)以下の小規模の飲食店では、喫煙可・分煙等も選択可能にする考えに至っています。
そんな中、上記に加え、以下のような追加措置案を講じる案が報道されています。以下の内容について知っていますか。


Q1.グラフ

Q2. 追加措置案について、どのように考えますか。

Q2.グラフ

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『喫煙可』『分煙』『禁煙』の表示を義務

店頭表示に関しては比較的ポジティブな反応で、約50%が賛成。
「お客様がお店を選んでくれる」との声が65%程度。一方で「原則禁煙とするなら、『禁煙』の表示は不要」との意見も半数程度挙がる。

Q3. .追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店は『喫煙可』・『分煙』・『禁煙』の表示を義務とすること」が追加された場合、どのような気持ちになりますか。(当てはまる内容を選択)

 

Q3.グラフ



Q4. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店は『喫煙可』・『分煙』・『禁煙』の表示を義務とすること」が追加された場合、それに関して、どのように考えますか。

Q4.グラフ

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未成年入店禁止

約50%が反対。特に喫煙店舗では6割を超える反対意見。 未成年かどうか確認などのオペレーションの複雑さが増す。家族などのグループ利用ができなくなり、結果的にトラブルになるとの声。

Q5. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、未成年者のお客様を立ち入り禁止とすること」が追加されたら、どのような気持ちになりますか。(当てはまる内容を選択)

Q5.グラフ


Q6. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、未成年者のお客様を立ち入り禁止とすること」が追加されたら、それに関して、どのように考えますか。

Q6.グラフ

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未成年就業禁止

50%以上が反対を示す。全従業員の1割以上を未成年者が占める事業者は30%以上であり、外食業界にとって未成年者は極めて重要な労働力となっており、働き手が減り、経営が立ち行かなくなると答えた事業者が半数に上る。若者のチャンスを潰すとの声も多数。

Q7. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、未成年者の従業員の就業を禁止とすること」が追加されたら、どのような気持ちになりますか。(当てはまる内容を選択)
Q7.グラフ


Q8. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、未成年者の従業員の就業を禁止とすること」が追加されたら、 それに関して、どのように考えますか。
Q8.グラフ

参考:未成年者の従業員(アルバイト含む)は、全体のどのくらいを占めていますか。

参考
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店頭でたばこによる健康影響に関する警告表示の義務

賛成3割・反対3割と票が割れる結果に。ただし、健康影響に関する周知は行政等ですべきで、わざわざ飲食店がする必要はないとの意見が7割弱に。店舗の外観のデザインやイメージを損なってしまうとの意見も半数程度に。

Q9. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、店頭でたばこによる健康影響に関する警告表示を義務とすること」が追加されたら、どのような気持ちになりますか。(当てはまる内容を選択)
Q9.グラフ


Q10. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、店頭でたばこによる健康影響に関する警告表示を義務とすること」が追加されたら、それに関して、どのように考えますか。

Q10.グラフ
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求人広告等を掲載する際に健康影響に関する警告表示の義務

4割程度が反対との意見。求人広告のスペースが減り、結果的に採用のコスト増に繋がる恐れがあるとの意見が半数に上る。

Q11. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、求人広告等を掲載する際に健康影響に関する警告表示を義務とすること」が追加されたら、どのような気持ちになりますか。(当てはまる内容を選択)
Q11.グラフ

Q12. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、求人広告等を掲載する際に健康影響に関する警告表示を義務とすること」が追加されたら、それに関して、あなたはどのように考えますか。

Q12.グラフ
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インターネット広告等を掲載する際に健康影響に関する警告表示の義務

4割程度が反対との意見。飲食事業者と広告の管理者が異なるため、現実的な対応が難しいとの意見や、店頭表示で十分で、過度である、との意見が半数程度あがる。

Q13. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、インターネット広告等を掲載する際に健康影響に関する警告表示を義務とすること」が追加されたら、どのような気持ちになりますか。(当てはまる内容を選択)
Q13.グラフ


Q14. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、インターネット広告等を掲載する際に健康影響に関する警告表示を義務とすること」が追加されたら、それに関して、どのように考えますか。
Q14.グラフ

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本人の同意なく喫煙できる飲食店への同伴を求めることの禁止

4割以上が反対意見を示す。同伴者全員に同意を取る必要があるので、大人数のお客様や、喫・非喫のグループの利用が減るのとの声が50%程度。お客様同士で解決できる問題であり、規制すべきではないとの意見も半数弱に。

Q15. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、本人の同意なくその飲食店への同伴を求めることを禁止すること」が追加されたら、どのような気持ちになりますか。(当てはまる内容を選択)
W15.グラフ

Q16. 追加措置案として、「延床150u(客席100u)以下の飲食店で喫煙可・分煙とした場合、本人の同意なくその飲食店への同伴を求めることを禁止すること」が追加されたら、 それに関して、どのように考えますか。

Q16.グラフ

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 その他、「追加措置案」には含まれないものの、厚労省案では喫煙専用室のみが分煙の手法として容認されており、エリア分煙・フロア分煙・仕切り分煙等の分煙措置に対して、事業者がどれほどの投資を行っているかの調査も行った。その結果も紹介したい。


喫煙環境への設備投資額

壁等で仕切られた仕切り分煙においては、323万円と、多大な投資が行われている

Q17. 喫煙ルールを儲ける際に要した費用をお知らせください。
(分煙施設の設置や空気清浄機などの導入費を含めた額)

喫煙環境への設備投資額グラフ

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 最後に、現在、厚労省案では「規制対象として健康影響がないことが確認できた際は、規制の対象外とする」との考え方を示している、火を使わずに使用する「新型たばこ」に関する飲食店の意識調査も行なった。その結果も紹介しておきたい。

新型たばこの許容度

半数以上が、「新型たばこ」を禁煙エリアで吸ってよいかどうかは事業者が自由に決めるべきとの意見。

Q18. IQOS、glo、Ploom TECHといった火を使わずに使用する新型たばこ(たばこベイパー製品)のように、周りのお客様へ配慮した製品(臭いも無く、室内空気環境への影響もなく、受動喫煙による健康影響が立証されていない製品)であれば、禁煙とした店や、分煙とした店での禁煙エリアにおいても、その製品の利用を許可するかどうかは事業者が自由に決めてもよいと思いますか。(当てはまる内容を選択)

Q17.グラフ

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※調査概要
  • 調査実施媒体:月刊「近代食堂」
  • 調査協力:クロスマーケティング
  • 調査手法:郵送WEB調査
  • 調査エリア:全国
  • 調査期間:2017年8月末〜9月初旬
受動喫煙防止法案および追加措置案に関する飲食事業者調査結果
こちらから今回の調査資料がダウンロードしていただけます

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