キッチンカーの初期費用はどれくらい?開業から軌道に乗せるためのポイントを解説

by Asahiya Publishing

公開日:2021.8.3

コロナの影響で新たな販路・売上の柱を求める店が増えている中、キッチンカーなどの移動販売形態に活路を見出す事例が増えています。需要がある地域 へ移動できる機動性や、商品性の高いメニューを提 供する例もあり、 実績を上げている店も。

一方、通常の飲食店とは異なる導入のポイントも。初期費用など、事例店や移動販売のプラットフォーム企業などを踏まえながら、上手に開業するための方法をご紹介。

イタリアンが新規で始めたキッチンカーの場合/コルポデラストレーガ

コロナ以前は平日ランチタイムに稼働し、 夜は店舗営業するスタイル

東京・銀座に店を構えるイタリアン 『コルポデラストレーガ』がキッチンカーを導入したのは、開業から5年経った2017年。 10坪の小規模店ゆえ、ランチの売上が1日3~4万円程度だった中、キッチンカー支援のプラットフォームを提供する(株)Mellowのサービスを利用しました。

同社のマッチングにより都心のオフィス街を中心に様々な場所へ出向いたところ、本格イタリアンを手ごろな価格の弁当で食べられると評判を呼び、多い日は昼だけで200食を販売。移動販売のランチ売上は店舗で営業していた時の4倍に。

「ポルケッタ」は同店の看板商品。 出来たて熱々の おいしさを追求しつつ、キッチンカーでの作業を簡略化することでスムーズな提供が可能に。

『コルポデラストレーガ』も1回目の緊急事態宣言を受けて店を休業。それでも「キッチンカーがなかったら昨年の夏には潰れていました」と、 オーナーシェフの谷口光将氏は振り返ります。谷口氏は店舗を休業した後、すぐにキッチンカーでの夜の営業を増やしました。

また同時に、タワマンへの出店を誘致する移動販売の支援サービス企業からの誘いもあり、需要の見込める住宅街やマンションへの出店にシフト。現在はキッチンカーだけで昼100食、夜も3時間ほどの営業で食近くを販売する成果をあげました。

定食にはご飯と炙りチャーシュー、刻み 玉ネギ、焼ネギ、海苔、漬物、海苔の佃煮を一皿ずつ盛り付け、山椒が。 具材を別盛りにすることで、できたて熱々の一杯をすぐに提供できるように。

キッチンカーには、シンクやガス台、冷蔵庫などの基本装備のほか、調理の汎用性の高い鉄板グリルをはじめ、オーブン、 ロティサリーマシンまであります。車両購入後に追加した調理機器や装備も含めると、キッチンカーには総額600万円近くを投資。その上で、提供するメニューは店舗の厨房での仕込み調理と、キッチンカーでの仕上げ調理のバランスを上手に考えて設計。注文ごとに鉄板で肉を焼く音やシズル感、出来たてのおいしさも、他店にはない魅力です。

「店がなくなっても、車だけで全て調理できるように」考えて作ったキッチンカーは、驚くほど装備が充実

■キッチンカーにかかるコスト
1.5tトラックを加工車登録
〈購入費用〉
300万円で購入+追加装備等で300万円 〈ランニングコスト〉
ガソリン代:3万円弱/月
車検:15万円(2年ごと)
駐車場代:3.5万円

東京都世田谷区と連携協定を締結し、3月15日から区立公園や区営住宅等においてキッチンカー等の移動販売出店を開始

キッチンカーの最大手プラットフォーマーの場合/株式会社Mellow

キッチンカーのプラットフォーマーの先駆けであり、キッチンカー登録店舗数と出店場所のトップを 誇る株式会社Mellow(以下メロウ、 本社/東京都千代田区、代表/石澤正 芳・森口拓也)。

飲食店向けの無料キッチンカー開業・経営相談の申し込みは、2020年3月時点と比較して5月時点で3倍のペースで増えて、中でも飲食店からの問い合わせが7割を超えています。メロウとしてはコロナ禍で飲食業がキッチンカーを活用した事業多角化を推進 することに支援するというスタンスを確信するようになりました。

豊洲市場仲卸事業者がMellowの出店プ ラットホームを活用してフードトラック 及び鮮魚小売移動販売事業に参入。

キッチンカー業界では、 これまで中古車の軽トラックを入手して自分でキッチン機能をつくるという ことが一般的で、不適切な改造車も出回っていたことから、車検の際に不合格になることが多々ありました。そこで、 トヨタグループとディスカションを重 ね、業務提携をしてメロウ仕様のキッチンカーを開発し、車のリースも行なうようになりました。

車は「タウンエース」がベースとな って、基本的なキッチン機能が付いて価格は650万円程度。残価設定型ローンで5年リース、初期費用が96万円で、車検や保険料、営業場所確保等のサポートを含め月額8万5000円。

Mellowと大阪・豊中市では2020年8月より豊中市内の公園や団地にキチンカーを定期的に出店する実験を行っていて、「住民満足度97%」と高いことから2021年4月より施策範囲を拡大

キッチンカー1台が目標とする月間 売上は100万円。ここにオペレーションを仕組み化すると、アルバイトが 1人で運営できるように。営業時間はランチタイム限定、最近では夜にマンションの前で営業することでトップラインをより上げていく事例も見られているとのことです。

パエリアを販売する「スペインクラブ」(新宿西口)

キッチンカーの新規プラットフォーマーの場合/ハウス食品

ハウス食品グループ本社(株)(以下、 ハウス食品)では、この3月にキッチンカーのプラットフォーマーに参入することをリリース。名称は「街角ステージweldi」。飲食事業者と遊休地を持つスペースオーナーをつなぎ、飲食業者に向けてキッチンカーの導入から運営までをワンストップでサービスするというものです。

"ガストロミックレストラン"をうたい独創的な肉料理弁当を販売する「トライベッカ品川」(信濃町)

「街角ステージweldi」には2パターンあり、パターンAは、「キッチンカー」と「販売場所」を提供するというもので、利用料金は「売上の25%+5000円」、パターンBはパターンAのサービスに仕込み場」の提供が加わる。Bの利用料金は「売上の35%+5000円」。ハウス食品は、場所の提供者に売上の8%を支払うというシステム。

Aパターンで想定される売上が、8万円だとすると1日当たりの店舗の粗利益は5万5000円から、手数料2万5000円とガソリン代・プロパンガス代、さらに食材や包材などの原材料を引いたものが相 当します。 キッチンカーの売上に関してはハウス食品側では管理しません。信用取引に基づいて飲食事業者は月末〆の翌月日払いでハウス食品に支払うというものです。

キッチンカーを始めるなら初期費用から検討してみよう

最近はキッチンカーを支援する業種も増えているので、以前より手軽に始められるようになりました。「何でもない場所が嬉しい場所に変わる」ということは、商売をする人もそれを受け止める消費者にとっても過去のさまざまな不便から解放してくれること間違いなし。
※月刊「近代食堂」2021年6月号に掲載した内容を再編集しています。

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