コーヒースタンド開業を目指す前に知っておきたい8のこと 資金と資格はどうする?
by旭屋出版編集部 Asahiya Publishing
公開日:2021.8.19
個人でコーヒースタンドを開くには、物件探し、資格、資金調達、メニュー決め……など、クリアすることがいっぱい!“やるからには失敗したくない”にお応えすべく、カフェやコーヒーに関する本を多く出版してきた旭屋出版の編集部が最低限おさえたいポイントをまとめました。
監修/(有)FBCインターナショナル 代表取締役 上野 登
はじめにおさえよう!3つの心得
1、まずは3年続けることを目標にする
3年以内に閉店に追い込まれる店は少なくありません。そうならないために、3年は絶対に続けられる事業計画を最初に組み立てることが大切です。3年を乗り越えることができれば、自分の店の強みも弱みもわかるだろうから、お客から受け入れてもらった長所をさらに伸ばせばいいでしょう。その後は、本人の意志さえあれば、何年も店を続けることができるハズ。
2、“More than expected”を意識する
あなたが、自分の店のラテに500円の値段をつけたとします。そのときに“More than expected”=期待していた以上のもの、つまりお客が500円以上の価値があると見出さなければ、リピーターなってもらうことは難しいでしょう。一人、二人で営業するコーヒースタンドの成否は「固定客がつくかどうか」。自分が提供するコーヒーは価格以上の価値はあるのか、まずは自身の胸に問いかけましょう。
3、自分にしかないオリジナリティを持つ
ラテアート、スイーツ作り、JBCでの優勝経験……など、「これが私のオリジナリティ」と胸を張って言えるものをひとつでももっていますか?「私には何もないけれどコーヒーが好きだし、お客様の笑顔を誰よりも大事にします」。コンビニ、自動販売機、カフェ……コーヒー供給過多の日本において、これだけでは前途多難。開業前に十分勉強を重ね、自分にしかない強みを見出し磨き上げましょう。
1、コンセプトを決める
「なぜコーヒースタンドをやりたいと思ったのか」「何をウリにするのか」「誰をターゲットにするのか」「どこでやるのか」「いつまで続けるのか」。これらのコンセプトをあいまいにしたまま、簡単な気持ちで店をはじめるのはとっても危険!お金さえあれば開業することはできますが、都心・地方に関わらずここ日本において飲食店を3年以上存続させるのは非常に大変なこと。そのため重要なのが、このコンセプト作りです。
開業以降は、売上やお客の動向によってやり方を変えざるを得ない部分は出てきますが、最初に掲げたコンセプトだけは絶対に守り抜きましょう。また、店の存続という言葉に逆らうようですが、コーヒースタンドという形態においては、特に最後に挙げた「いつまで続けるのか」も大切。
5坪くらいの規模から自分一人でもスタートできるコーヒ―スタンドは、経営者としての経験を積むよい機会になりますが、なかには、イートインスペースカフェの開業や他店舗展開を目指す人も。次のステップを見据えながら、店の根幹であるコンセプト作りをしっかり行いましょう。
2、物件を探す
立地は、コーヒースタンドの成否をきめる大きな要素。一昔前は「店舗前通行量」というものが重視されていましたが、それより重要なのは、自分がターゲットとする客層がどのくらいいて、曜日、天候、季節によって彼らがどういう動きをするのかを把握すること。
たとえば、テイクアウトスタイルのスタンドで、ターゲット層のOLは、雨の日に傘をさしてまでコーヒーを買いに来るでしょうか?来ないとなれば、梅雨場の売上げは見込めません。理想の物件を見つけるためには、とにかく自分が出店したいエリアに足しげく通うしかないのです。
すでにネットやチラシで出ている物件の多くは余りもので、大手コーヒーチェーンの店舗開発の営業マンがダメだと判断した物件の場合も。また、不動産用語で「千三(せんみつ)」という言葉が使われますが、これは「1000軒のうち3軒しか優良物件はない」という意味が込められています。不動産屋だけでなく、目ぼしい物件の大家のところへ何回も通って口説くくらいの気合いがなければ、理想の物件はそう簡単に見つからないと思ったほうがよいでしょう。
物件取得費用も高額なので、立地選びに失敗してもすぐに撤収できるものではありません。3年はそこから動けない、その覚悟を持って粘り強く探しましょう。
3、必要な資格/許可・申請
コーヒースタンドを開くにあたっては、「食品衛生責任者」の資格とともに食品衛生法に基づく営業許可が必要。コーヒーとともに、店で調理したフードやスイーツを提供するなら「飲食店営業」、仕入れ品の食べ物を提供するだけなら「喫茶店営業」。このどちらかを申請しなければいけません。営業の仕方や都道府県ごとの条例によってそろえなければならない設備、什器などが決まっているので、まず所轄の保健所などに問い合わせること。
最近は、コストダウンを図って、規制のゆるい「催事」許可を取得して長期間営業を続けるケースや、見た目の悪い手洗いスペースなどを店内に設けるのを嫌がって、必要な設備を省いてしまう店があります。決められた法律は遵守しなければいけません。
融資を受ける際に提出が必要になる事業計画書については、少なくとも3年間、手元資金が枯渇せず店を存続できるような形で作成すること。10~20年前に言われた、「マーケットに認知されることによって、売上げは年々2%ずつ上がる」という論理はもはや神話。今の時代は、世間で話題に上がるオープン時が売り上げのピークと言うケースも。このことを念頭に置いて事業計画を立てたい。
4、資金調達
開業資金については、全費用の51%は手元で用意したいものです。コーヒースタンドを開業する場合、立地や規模にもよるが、物件取得費用をのぞき最低500万円はかかると考えていいでしょう。つまり、250万円以上は貯めておく必要があるということ。
残りの資金をどこから借り入れするかについて、まずは国や都道府県が設ける公的な開業資金を視野に入れましょう。たとえば日本政策金融公庫では、一定の条件を満たせば有利な条件で融資を受けることができるし、自治体によっては金利の半分を負担する融資制度を設けているところも。調べていくうちに、手当が厚いエリアが見つかったのなら、出店場所を変えてしまうというのもひとつの手。
ただし、公的機関であっても失敗しそうな店に対して融資はできないので、提出の際に必要になる事業計画書の内容が重要なカギとなります。ちなみに然るべきバリスタ大会での優勝、入賞経験などは、融資の決定材料として有利に働く場合も。