渡邉美樹氏メッセージ<逆境を乗り越える飲食店経営>近代食堂5月号より
大事にしたお客様は、みな味方になってくれる
読者へのメッセージとしては悲観的かもしれません。でもそれくらい、今回は厳しい状況です。居酒屋をはじめ飲食店への時短、休業要請がなされ、日銭で動いている飲食店では今回の影響で耐えられない店が続出するでしょう。でもそうなる時にまず「デッドラインを決める」という考え方をもってほしいのです。
具体的なデッドラインはどのように決めるのか。まずは政府や自治体が打ち出している特別融資、補償、助成金などをできる限り集め、手元に現金があることを踏まえた上で、試算します。
昨年対比50%ならあと何ヵ月続けられるか。30 %なら、休業をひと月続けたら…と、最悪のストーリーを3つくらい掲げておくのです。
このストーリーがあればやることも見えてきます。「昨対50%が続いて、半年後まで稼げる見込みがなければ白旗をあげよう」という具合にです。
ストーリーを決めたら、あとは目の前のお客様に全力を尽くす。もし今、あなたの店が営業できているのなら、今日いらっしゃったのがたった一人のお客様だとしても、その一人を大事にして、覚悟を持って尽くすのです。
この先、刀折れ矢尽きて店が終わるかもしれない。でも終わらなかった時は、その大切にしてきたお客様がみんな味方になってくれます。終わったとしても、大切にしたお客様は覚えていてくださるはずです。
慌てて手を打たない、という手もある
存続に繋がることは何でもやっておいたほうがいいと思いますが、一方で店の事情や状況も顧みず、安易に宅配やテイクアウトを始めても、まずうまくはいかないと思います。チラシを刷る費用や容器代、その支出が、お店の死期を早めるかもしれない。できることはやるべきですが、慌てて手を打たない、という手もある。
ワタミの社内報のタイトルは「体の重い亀」。これは、冒頭でお話しした経営危機の時に、私が日記に書いた言葉です。もうこの嵐の中では手足を引っ込めて過ぎ去るのを待とう。嵐がやんだら、雨にも風にも後退しない体の重さを持ちながら、一歩ずつ亀のように進もう。時には慌ててもしょうがないという覚悟も必要なのです。