アフターコロナに向けて。【近代食堂5月号編集後記より(一部改稿)】

 


 今月号の最後の取材を終えた帰路、自宅より2駅先の東村山駅へ足をのばしました。3月29日、新型コロナウイルスによる肺炎のため死去した志村けんさんを悼む献花台があると知ったからです(現在は終了しています)。


 駅前には、東村山市出身の志村さんへ感謝の証として、「志村けんの木」が植樹されています。献花台はその木の脇にありました。



↑東村山駅前のロータリーに植樹されている3本の欅が「志村けんの木」



駅前には白バイ、パトカーが配備され、数名の市職員と思われる方や警察官がおりました。感染拡大防止のため、献花に訪れる人も、周囲に配慮し手早く手を合わせておりました。人の少ない夕暮れ時、それでも訪れる人は、ひそやかに、後を絶ちませんでした。




↑4月5日まで設置されていた献花台。供物はやっぱりお酒が多かった。


 献花台の前で手を合わせた瞬間、思った以上に自分の中の志村ロスが大きいことに驚きました。この喪失感は何だろうか。自分なりに考えると、同世代の皆さんと同じく、土曜日の夜8時といえば一週間の終わりの大きな楽しみでした。みんな揃っての夕食後、家族揃って観る娯楽、身近なとびっきりのレジャー。 


 その思い出ごと、新型コロナが奪い去ってしまったことに、深く落ち込んでいる自分に気付いたのです。私を含め、あの場にいた人の多くは、傷ついた自分自身を抱きしめ、慰めるために、献花台に手を合わせていたのではないでしょうか。


 私たちにとって一番身近なレジャーである外食も、多くの飲食店がいまコロナの影響で休業、閉業に追い込まれています。小学生になる私の子ども達も、3月からさらに1ヵ月延長された休校措置のもと頑張って(ゲームして)いますが、普段なら騒ぎ立てるように言う「外食行きたい」という思いを、いまは自分なりに抑えているように見えます。志村けんさんと同じように、外食がもたらしてくれていた家族の団欒の場の楽しさ、喜びの大きさを、今まさに実感しています。


 休業、閉業に迫られ、悔し涙している人もいるでしょう。こんな目に遭わせたコロナの奴は、到底勘弁なりません。でも今を耐え、コロナが終息した暁には、外食を心待ちにしている人がきっと想像以上にいるはず。「アフターコロナ」の世界は、これまでと違った外食の世界になるかもしません。決して今までと同じやり方では通用しないかもしれません。


 でも、決して変わらない外食の喜び、原理原則はあるはずです。いま飲食店を経営されている方も、家族での外食、友達との外食、ご自身の温かい記憶、その原風景を創業の原動力とされている人は少なくないでしょう。その灯は、困難にあって小さくなれども、決して消えるものではありません。


 アフターコロナに向けて、私たち飲食店は何をすべきか、これからも皆さんと一緒に考え、逆襲したいと思います。


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なお、近代食堂2020年5月号では、


がんばろう!飲食店 


「新型コロナの逆境を乗り越える飲食店経営」


と題しまして、これまで多くの経営危機、困難を乗り越えてきた外食経営者にインタビュー。今まさに必要な経営者の姿勢と考え方、これから先も必要となる飲食店のあり方について、多くのアドバイスをいただいています。ぜひご覧ください。


 


<ご登場いただいた経営者>


●ワタミ株式会社 渡邉美樹氏


 →「デッドラインとの向き合い方


●株式会社ユサワフードシステムズ 湯澤剛氏


 →「借金40億円を乗り越えた逆境時の心得


●ドリーマーズ株式会社 中村正利氏


 →「震災後に築いた、実績比80%の潰れない経営モデル



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近代食堂では引き続き、新型コロナウイルスの影響や飲食店の対策について、誌面やWebにて情報をお届けいたします。


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