渡邉美樹氏メッセージ<逆境を乗り越える飲食店経営>近代食堂5月号より
***近代食堂2020年5月号<逆境を乗り越える飲食店経営>より無料公開***
新型コロナウイルスの発生以降、中国からの撤退や、小中高生向けの 宅食支援、こどもランチの提供など、数々の対応の動きを見せているワタミ㈱。昨年、国会議員から経営の現場に復帰した創業者の渡邉美樹代表取締役会長は、著書『警鐘』に記したように、近い将来訪れる日本の財政危機を見据え、乗り切るための事業計画を打ち出した。危機 と向き合いながら経営に当たる渡邉氏は、今回のコロナ禍をどう捉え ているのか。自身の創業期、中小経営者時代を振り返りながら、読者 へアドバイスを送ってくれた(インタビューは東京都知事の自粛要請発表の2日後、3月27日に行なわれました)。
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デッドラインと、向き合う覚悟を
創業して4店舗目を出した時、経営危機に見舞われました。毎月、何百万円もの赤字を垂れ流し、どんなに頑張ってもどうしょうもない。30店舗の頃も同じような事態で会社が潰れそうになりました。今回の新型コロナの影響は、潰れそうになったあの時と同じ状況が浮かびます。
こういった危機を迎えた時、できることは「デッドライン」を決めることです。「こういう状況になったら会社を潰す」という線を決めておくのです。
私の場合、どんなに危機でも「銀行からしかお金は借りない」と決めていました。会社は「倒産ではなく、清算する」と決めていました。もうダメだという状態でも、清算するためのお金は残す。社員には「ごめんね、この会社はなくなるよ。ついては給料の半分は支払うからこれで終わりにします」と言う。
仕入れ先には「すみません。全額は払えないのですが半額でなんとか終わりにさせてください」と頭を下げようと。半分だけ払って、あとは個人で借金を背負って会社を終わろうと思っていました。これが当時、私が描いたデッドラインです。
このデッドラインと向き合わず、ズルズルと引き伸ばして一番悪いのは、高利貸しに手を出したり無謀な手形を切ること。自己破産し、夜逃げせざるを得ない状況になってしまうことです。
きれいに清算するのであれば、一度は倒れても必ず再生の機会は訪れます。でも汚く、ずるい形で破産したら誰もチャンスは与えてくれません。