接客力
近代食堂編集部 編
いま、「接客」を店の大きな魅力として掲げている居酒屋・ダイニングを取り上げ、どのように「接客」をみがいているかを徹底解明。
- 判型
- 四六判
- ページ数
- 227ページ
- 発売日
- 2007/10/01
- ISBN-13
- 9784751107065
- 備考
- 定価
- 1,650円(税込)
いま、「接客」を店の大きな魅力として掲げている居酒屋・ダイニングを取り上げ、どのように「接客」をみがいているかを徹底解明。
「てっぺん」、「くふ楽」、「スマイルリンクル」、「隊」、「ワールド・ワン」、「RAKUSHOU」を事例に、どのように「接客」をみがいているかを徹底解明。
【目次】
「接客力」にこだわる飲食店が増大中。
毎日のお客様の声を、着実に行動の原点にする。(株式会社ワールド・ワン)
「独立を目指す店長の背中を見て、磨かれる接客力(有限会社隊)
「ありがとう」と「笑顔」の接客を全員の決意に(株式会社スマイルリンクル)
働く意識の高さから、接客力に輝きを持たせる(株式会社KUURAKUGROUP)
「カウンター商売の長所が」生きる接客力を伸ばす(有限会社RAKUSHO)
「究極のサービスは人間力の一徹低追求から生まれる(有限会社てっぺん)
~「接客力」にこだわる飲食店が増大中~ より
現在、実に様々な飲食店が街にあふれています。どの店も、より多くのお客を集めるために「こだわり」を持っています。差別化できるものがないと、勝ち残ってはいけません。値段の差別化もあります。材料の品質がいいという差別化もあります。味の差別化もあります。盛り付けの差別化もあります。
来店してポイントをためると特典があるという差別化もあります。
そして、いま、「接客法」にこだわわる飲食店が増えているのです。
もう、他にこだわるものがなくなって、接客法にまでこだわる飲食店が出てきたと見る人もいるでしょう。しかし、違うと思います。現代のお客が「新しい接客」を飲食店に求めているのです。そこに気が付いて、「接客法」で差別化を狙う飲食店が増えているのです。
いま、接客にこだわる飲食店は、フランス料理や割烹などの高客単価の飲食店ではなく、居酒屋やダイニングといった、若い世代を集めている大衆的な飲食店に特に目立つ傾向があるのです。
現代の若い世代は、ファストフード店に親しんだ世代です。セルフサービスに馴 れ、マニュアルを実行する接客サービスの体験を積み重ねてきた世代です。
こういう若い世代には、個性のある接客サービス、印象的な接客サービスが店の選びの要素の一つになるのです。そして、魅力として伝わる接客法には、「接客力」があると言えます。」
本書は、この「接客力」を店の魅力として打ち立てている居酒屋・ダイニングを取材し、接客力を高める取り組み方にスポットを当ててレポートする本です。
覚える接客から、考える接客へ。
本書に登場する6社の居酒屋・ダイニングは、業態も規模も様々です。3ページの『VOCO』は0坪のカウンター中心の店です。10ページの『金魚』は3坪の居酒屋です。それぞれの店が接客のコンセプトをしっかりと持っています。
最初に紹介しますが、この6社の接客法には共通点があります。それは覚えたマニュアルを実行する接客ではなく、考えながらする接客法だということです。
多くの店で、スタッフ全員がメモ帳をポケットに持ちながらホールの仕事をしていました。気が付いたこと、また、先輩から言われたことをすぐにメモしていました。そのメモは後で読み返され、また、ミーティングのときに発表され、スタッフと共有されます。
また、朝礼を実行している店も多かったです。そして、朝礼が接客法にかなり影響を与える役割をしているのです。
元気よく接客できるよう、営業のスタート直前の朝礼でテンションを高め、さらに、朝礼で自分の意見を発表して自己表現の毎日のトレーニングとし、しかも、仲間とのコミュニケーションを確かめ合う。攻めの朝礼です。
毎日考えて実行する接客をしている店が、確実に、そして、着実に「また行きたい」と思うお客を増やしているのです。
「この店でぜひ働きたい」と熱望させる接客。
20年以上前からファストフード店チェーンもファミリーレストランチェーンも接客マニュアルを積極的に採用してきました。アルバイトの人にも短期間で仕事を覚えてもらい、経験が少ない人でもそつなく働いてもらえるようするのが、接客マニュアルの威力です。
これからますます人手不足時代が深刻化するようです。少子化で学生アルバイトの絶対数が減りますし、継続的に働こうとしないニートも増えるようです。一方でコンビニだけでなくハンバーガー店も4時間営業店を増やすので1店で確保するアルバイト数が増えて、すでに人手の奪い合いは激化しています。
ところが、本書の6社の各店は共通して接客マニュアルを暗記してもらうことを重視していません。人手不足にも悩んではいません。「働きたい」という応募が多くて対応に苦労しているという声すら聞きました。
なぜでしょうか。
それは、誰もがすぐできる接客は目指していないからです。ある人だからできる接客法を教えているからです。「ある人」とは、サービス業である飲食店の仕事に人生を賭けたいという意気込みを持った人です。本書の6社は、「飲食店で働いて自分の夢を実現したい」と思う人を採用しています。
「あの店のスタッフは全員凄いぞ」
「あの店のやる気のパワーは半端じゃないらしい」
というウワサがウワサを呼び、飲食店での独立を夢見る若者を「お客」として連日集めて、これが繁盛の要因になっているのも確かです。
「急がば、接客力の強化!」の時代に。
飲食店の経営を考えるとき、これまでは、まず、どんなメニューにするか、どんな内装にするかを決めるのが定石でした。料理で差別化し、店舗空間デザインで差別化することが、お客を集める大きな柱とされてきました。
本書は、これからの飲食店は、メニューと店舗デザインの他、接客法も差別化の大きな柱になることを紹介した本です。
店づくり、店のコンセプトをまず「接客法」から決めることも新しい発想としてあることも紹介した本でもあります。
さらには、「おいしい」だけではなかなか差別化できない現状、ますます広がる人手不足や人材不足の問題を打破するカギも「接客法」にあることを紹介した本です。
これまでは、店をオープンしてから考えられた「接客法」です。でも、まず「接客法」から考えることも重要になっています。飲食店では接客法に関してもコンセプトが必要な時代になってきたと言えます。
メニューや店舗は、開業時を目指して完成させます。しかし、接客のコンセプトは開業してから毎日が目標達成の日々です。どういう接客をするかの目標を立てることも大切ですが、その目標に向かい「接客力」を磨き、高め続けるためにどうしたらいいかも非常に大切で、難しいことです。
その難しいことに立ち向かっているのも、本書の6社の共通点です。
接客法について、いろいろな取り組みをしている本書の6社ですが、突き詰めると共通点が多いことを、読んでいくと発見してもらえると思います。そうした「お客の心を動かす本質」を欄外に書き出していきました。この欄外だけを読み直しても、また、欄外から読み進んでいただいても結構です。
外食する楽しさ、そして、飲食店で働く楽しさの双方に新しい時代が到来していることを実感してもえる本になることを期待して編集しました。
月刊「近代食堂」編集部飲食店の「接客力」研究部会